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1966年型 タイプ1コンバーチブルがある父子の夢をのせてドイツに帰る No.2

2021/01/14

トピックス

幌のカバーも、適度に使われていた痕跡を微かに残しながらも丁寧に畳まれて、トランクスペースに収められていた。
中には、元吉さん自身がモディファイを施している部分もある。フェンダーの端に表側からは見えないように穴を開けたり、エンジンフードの裏側にゴムパイプを這わせ水を抜けやすく加工している。雨天時には乗らないようにしていたが、用心して水抜き穴を開けていた。錆を未然に防ぐためだ。
他にもそうした工夫やモディファイがいくつも施されている。しかし、それらはどれもこれ見よがしの“改造”ではなく、極力、目立たないように手当てされている。
「カネコさん、どうぞ」
「えっ!?」
「運転してみませんか?」
万が一、壊してしまったり、アクシデントに巻き込まれてしまったら台無しだ。しかし、こんな素晴らしいタイプ1コンバーチブルを運転できるチャンスなど、もうないだろう。千載一遇のチャンスの前では、謙譲は美徳ではない。会社に向かって走り出した。

 タイプ1コンバーチブルは、スタンダードのタイプ1と同じ、バックボーンフレームシャシーに空冷の水平対向4気筒エンジンを組み込んである。トランスミッションはマニュアル4速。
「ローで引っ張るのではなく、すぐにセカンドに入れて加速した方がスムーズに走れます」
廣野さんのアドバイス通りに、幹線道路でタイプ1コンバーチブルを加速させた。3速から4速へと速度を上げたところで前方の信号が赤に変わった。
「ブレーキは現代のクルマと違いますね」
現代のクルマのように、瞬間的に強く踏みつけるのではなく、じんわりと踏み続けなければならない。
トランスミッションの操作も拙速は禁物で、シフトアップも確実に行わないとギアが鳴って入らなくなりがちなのはこの年代のクルマに共通している。ニュートラルのポジションでいったんクラッチをつなげるダブルクラッチを踏めば、より確実だ。

ブレーキと変速さえ確実に余裕をもって行えば、幹線道路のクルマの流れに従って走ることはまったく問題ない。エンジンは完璧に整備されていて、快調そのものだ。オリジナルのままというラジオからAM放送が聞こえてくるのもタイムスリップした気分だ。
幌を下ろして走っていたが、乗り心地が良いのにも驚かされた。強固なバックボーンフレームに4輪のサスペンションが取り付けられ、それらが路面からのショックを巧みに吸収している。風を頬に受け、空冷フラットフォアのビートを聞きながら走るのは心地良い。これを運転することになるフォルクスワーゲン本社ミュージアムのスタッフも感嘆するに違いないだろう。

No.3へ続く